地形分野関連実験施設

筑波大学地形学研究室で学ぶ大きなメリットの一つに、「地形プロセス研究のための室内実験設備が、世界中の地形学研究室に類をみないほど充実している」点が挙げられます。岩石風化実験用の恒温恒湿槽、周氷河プロセス実験用の低温恒温恒湿室、海岸地形実験用の小型平面造波水槽、岩石強度測定用の各種試験機など、研究室が有する各種実験設備のほか、研究室の構成教員が勤務するアイソトープ環境動態研究センター環境動態予測部門の設備(河川地形実験用大型・小型水路、海岸・海底実験用の二次元造波水路・複合流水路・振動板装置、各種流速計、高速度カメラ)を活用し、研究を推進しています。
(参考)地形分野紹介ポスター(PDF
低温恒温恒湿槽
 


岩石の凍結融解、乾燥湿潤、塩類析出による風化・破壊実験、土の凍上実験などを行います。火星や南極の気候条件のシミュレ-ション、石造文化財の破壊と保全に関する実験も行っています。写真の例では、天然記念物「碓氷トンネル」のレンガ壁材の凍結破壊を調べています。このほか、乾燥・湿潤サイクルによる塩類風化実験などでも利用されています。
低温恒温恒湿室
 

上記の恒温恒湿槽での実験よりも規模の大きい実験を行います。例えば、実物サイズでの周氷河地形(各種構造土、インボリューション等)のシミュレ-ション実験等を行っています。写真の例では、北上低地で採取したロームと軽石を使用して、最終氷期に形成されたインボリューションの形成機構を調べています。凍結融解の繰り返しに伴って、二層の境界面が変形します。
大型水路(アイソトープ環境動態研究センター環境動態予測部門)
河川における地形プロセスの研究に用いられています。室内水路としては世界最大級の流水路(長さ160 m,幅4 m,深さ2 m)で、実際の河川と同等のスケールで現象を再現できます。交互砂洲と呼ばれる河川地形を研究するために1977年に建造され、以降30年以上にわたって河川形態や河床形をはじめ、砂礫の混合効果等の研究を行ってきました。最近は河床礫の磨耗実験に使っています。
二次元造波水路(アイソトープ環境動態研究センター環境動態予測部門)

水面波を発生させ、海岸や海底の地形変化を模式的に再現するための装置です。暴浪による一時的な海岸侵食や、海底の微地形(ウェーブリップル)の遷移プロセスなどについて、アナログ・シミュレーションを行っています。写真は、波による単純な一次元振動流がつくるウェーブリップルの断面形と、リップル上の砂の動きを示します。
二方向振動板装置(アイソトープ環境動態研究センター環境動態予測部門)

二次元造波水槽と同様、波浪による地形プロセスを研究するための装置です。この装置では、砂が入ったトレイを静水中で複雑に振動させることで、干渉波下で生じる複雑な二次元振動流と砂の相互作用を模式的に再現できます。たとえば、円状の水平軌道を描く二次元振動流下では、複雑な波峰線ネットワークを示すinterference ripple(写真:上方から撮影)が発達します。
高速度カメラ(アイソトープ環境動態研究センター環境動態予測部門)
高画質画像を秒間500コマ撮影できるカメラ。撮影された映像は、流体や土砂の挙動の解析に使われます。