地形学は、地表の形態(地形)がどのように形成されてきたのか、また将来どうなるのかについて科学的方法で研究する学問です。地形学のフィールドは高山から、河川、海岸、深海底まで、極域から赤道域まで多岐にわたります。筑波大学地形学分野では、野外観測と室内実験によって地形の変化の過程(プロセス)を明らかにします。

日本地球惑星科学連合(JpGU)2023年大会

2023年5月21日(日)~5月26日(金)に、日本地球惑星科学連合(JpGU)2023年大会が幕張メッセ・オンラインのハイブリッドで開催されます。地形分野からも、院生やスタッフの発表があります。

  • Suzuki, K., Hattanji, T.Ogura, T., Furuichi, T., Tanaka, Y., Doshida, S.: Conditions for topographic changes in shallow landslide scars due to rainfall events: High-resolution analysis based on UAV-SfM approach
  • 齋藤健太八反地 剛小倉拓郎・古市剛久・田中 靖・土志田正二:UAV-LiDARデータと既存の航空LiDARデータを活用した水路頭の移動の検討 ―2018年7月西日本豪雨の事例―
  • 梶田大陽八反地 剛小倉拓郎・土志田正二・古市剛久・田中 靖:中世山城跡およびその周辺斜面における斜面崩壊の地形的特徴 ―2014 年広島豪雨の事例―
  • 松本 栞八反地 剛小倉拓郎・古市剛久・土志田正二・田中 靖:山口県防府市の山地小流域にみられる段丘堆積物
  • 高木 優小倉拓郎・田村裕彦・小口千明・早川裕弌・佐藤昌人・八反地 剛:高密度点群データを用いた地下文化遺産と表層地形の解析―田谷の洞窟における事例―
  • Ogura, T., Sakamoto, Y., Ando, K.: Measurement of microtopographical features using the low-cost mobile laser scanner in Nippara Limestone Cave, eastern Japan
  • 小倉拓郎:スマートフォンと3Dスキャンアプリを用いた簡易写真測量実習の試み
  • 飯塚浩太郎・山内啓之・小倉拓郎・のりたま・Kuroly:海岸地形を対象としたメタバース巡検の実践―VR内人流データによる時空間解析―
  • Tamura, Y., Hayakawa, Y.S., Morita, M., Oguchi, C.T., Ogata, K., Ogura, T.: Inclusive outreach design from the multidisciplinary research projects for the Underground Built Heritage “Taya Cave”
  • Yang, Y., Oguchi, T., Yamauchi, H., Ogura, T.: Assessing students' knowledge retention and mitigation behaviors using a VR flood system
  • Lo, T., Hayakawa, Y.S., Nakata, Y., Hayamizu, M., Ogura, T.Assessing the sediment connectivity and mobility with morphological changes in mountainous drainage basins following landsides by the 2018 Hokkaido Eastern Iburi Earthquake
  • Tamura, Y., Hayakawa, Y.S., Oguchi, C.T., Ogura, T.: Outline of sustainable research for the conservation and utilization of Underground Built Heritage "Taya Cave"

新着論文:本州太平洋岸の海食凹地形における地質条件の影響

篠原さん(2021年修士課程修了)の修士論文をベースとした論文が地学雑誌に掲載されました。地質条件がノッチ・アーチ・ケーブ・トンネルなどの海食凹地形の形成条件に与える影響を示しました。ドローンによる地形測量とシュミットハンマーによる岩盤強度の測定を組み合わせました。

篠原叶実・伊藤敦哉・小倉拓郎松岡憲知(2023)本州太平洋岸の海食凹地形における地質条件の影響.地学雑誌,132-1,33-55.



JGU地形の学校2022「風化・侵食プロセスと地形変化 とくに、風化・侵食のプロセスの実態やそれに伴う地形変化とその速度について」

JGU地形の学校2022は、2022年11月29日(火)に東京大学柏の葉キャンパスサテライト・オンラインのハイブリッド開催で実施されました。講師は本分野の名誉教授である松倉公憲先生です。風化や侵食について、ご自身や指導学生らとの研究について、わかりやすく話題提供いただきました。

https://jgu-school-2022.peatix.com/






日本地形学連合2022年秋季大会

2022年11月5日(土)~11月6日(日)に、日本地形学連合2022年秋季大会が北海道大学・オンラインのハイブリッドで開催されます。地形学分野の院生・学生・スタッフが発表します。

  • 原田駿介・小倉拓郎・八反地 剛・早川裕弌, UAV-LiDAR を用いた廃道路面の計測に基づく山地斜面における土砂移動の評価 ―10 年単位での時系列解析―. O27.
  • 高木 優・小倉拓郎・佐藤昌人・田村裕彦, 林床の地形計測を想定した低価格モバイル LiDAR スキャナの運用に関する検証. O26..
  • 鹿野友渚・小倉拓郎, 新学習指導要領の地学・地理における地形学習の内容・構造の分析 ―校種間の連続性や空間スケールに着目して―. O28.
  • 富所晨悟・佐藤昌人・小倉拓郎・八反地 剛, LiDARと写真測量で作成したタフォニの三次元データの比較-野島崎における事例-. P20
  • 小倉拓郎・水野敏明・片山大輔・山中大輔・佐藤祐一, RTK-UAV と河床変動シミュレーションを用いた魚道設置事業の支援 -東近江市版 SIB によるビワマス魚道を対象として-. P16.
  • 田中 靖・八反地 剛・古賀 亘・河野孝俊・古市剛久・土志田正二・小倉拓郎, 放射性炭素年代と土層発達シミュレーションモデルから推定される谷頭凹地の埋積速度と拡散係数 -広島市の花崗岩山地流域の事例-. O16-SS.
  • 松岡憲知・篠原叶実・伊藤敦哉・牛込佳太・小倉拓郎・小玉芳敬・金山恭子, 海食凹地形の分類と形成条件. O21.

地形学分野関連の集中講義

本年度中に開講される地形学分野関連の集中講義です。

  • 地形学特別講義Ⅱ(大学院)
    日時:2022年8月22日(月)~8月24日(水)
    講師:今泉文寿(静岡大学農学部)
    内容:崩壊・土石流などのマスムーブメント ほか

  • 地生態学(学群・地球学類)
    日時:2022年8月30日(火)~9月1日(木)
    講師:青木賢人(金沢大学人間科学系)
    内容:地形・地質と植生,気候変動と植生 ほか

  • 地形学特別講義Ⅰ(大学院)
    日時:オンデマンド講義,2022年9月19日(月・祝)
    担当:小倉拓郎
    内容:高精細地形情報の取得・解析と活用,UAV-Lidar実習 ほか

地形学野外実験Ⅱ:愛知川

2022年8月2日(火)~8月4日(木)に、大学院生の科目「地形学野外実験Ⅱ」の一環として、滋賀県東近江市・愛知川に行きました。巡検の様子を写真で振り返ります。

まずは愛知川の河口から少し手前あたり。
維持管理されている水害防備林の様子がよくわかります。

滋賀県琵琶湖環境科学研究センター・主任研究員の水野敏明さんによる解説。
地形発達やそれに付随する生態系保全など多岐にわたる内容を説明していただきました。

愛知川河口付近へ移動


河口から鈴鹿山脈のほうを見てみます

測量したデータは夜に解析。。

2日目はスタッフの小倉が共同研究の一環で計測している愛知川中流域
ちょうど扇状地の扇端にあたる箇所です。

その後上流に向かい…

支流の渋川を歩きます。

愛知川の段丘礫層を観察
その後、上流にある永源寺ダムを見学しました。

開催報告:筑波大学高校生公開講座:地理総合ステップアップ!地理情報システム(GIS)・ドローンを使って地域を分析してみよう

7月9日(土)・8月8日(月)に、筑波大学1Dサテライトにて、スタッフの小倉とM1の原田が、「筑波大学高校生公開講座:地理総合ステップアップ!地理情報システム(GIS)・ドローンを使って地域を分析してみよう」を開催しました。当日の様子を写真で振り返ります。記事には7月・8月開催分両方の写真が含まれております。

GISとは何か?身近な生活にも使用されているGISの基本的な原理を紹介しました。

講義の後、実際にWebGISを用いて東京都の浸水想定区域を見てみました。
距離計算や属性情報の閲覧など、簡単な操作を実習形式で体験しました。

レイヤを上手に切り替えていく!!

講師の山内さん(東大・院)

午後はみんなで外へ出て…

環境調査に使用するドローンの紹介

プロポを見ながら実際に飛んでいる様子を観察

筑波山が良く見えました!

当日撮影した画像から作成した3Dデータはこちら

ドローンで作成した3Dデータの活用先として
3Dプリンタで作製した地形模型を展示。
時系列変化を読み取ってもらいました。
(北海道立総合研究機構森林研究本部・林業試験場,
北海道大学地球環境科学研究院・早川裕弌准教授より
地形模型をお借りしました)

8月開催分には松見池周辺の3Dプリントも展示しました!間に合った。。

最後はQGIS実習。デスクトップGISは皆さん初めてで、
なかなかやりごたえのある実習だったのではないでしょうか。

扇状地をきれいに表現にすべく、
ラスタデータの色の振り分けをうまく変化させています。
「ワンランク上の地図づくり」は無事達成できましたか?

力作①扇端を表現するために、連続カラーだけでなく色の繰り返しを使いました。

力作②傾斜量図の閾値を巧みに変えて、扇状地全体を理解しやすい形にしました。

力作③明るい色を遣わずに、品のある色づかいで落ち着いた様子がうかがえます。


参加者からの感想(参加者アンケートからの抜粋)

7月開催分
  • 聞きかじりで断片的にでしか理解できずにいたGISやドローンのことを、きちんと学ぶ「術」のようなものが会得できたような気がします。ありがとうございました。
  • 講話と体験をバランスよく取り入れられていて楽しかった。大学内の探検も兼ねられていて来てよかったと実感した。
  • かなり面白かった。休日を一日潰した価値はあった。
  • 大学での地理分野の概要などを少し知ることができたと言う点で、とても興味深かった。
  • 全体を通して講師の先生方の手厚いサポートがあり、それがアットホームな雰囲気を作り出していて、初めは緊張していましたが徐々に雰囲気にも慣れ、リラックスした状態で講義を受けることができました。実習も情報の読み取りや記述などで所々苦戦を強いられるなど、歯応えのあるもので達成感を感じることができました。
8月開催分
  • 少し難しい内容を扱っていたと思うが、わかりやすい解説のおかげで楽しむことができました!
  • 実習ありのプログラムで、実際に体験することによって学習が深まったと思う。3Dプリントや地図データを比較して雀島を測定してみたり、ドローンを用いて地形観察をするなど様々な体験ができ面白かった。また、最後のQGISの実習については上の感想でも書いたように難しいと同時に面白い・楽しいと思うような興味深い講義だった。本日の講義を準備してくださった先生方、ありがとうございました。
  • 学校の地理の授業だと軽くしか触れられていないGISを深堀して5時間みっちりと触れられて楽しかったし、勉強になりました。楽しくて勉強になる素晴らしい講座を企画してくださりありがとうございました。
  • 「GIS」と聞いたときにイメージ出来るものがなかったし「デジタル地図」と聞いても紙の印刷地図かスクリーンに映し出される縮尺自在の地図の違いくらいしか思いつかなかったけれど、デジタル化することで様々な用途が生まれたり、応用の範囲が広がることを学んだ。またドローンを使って簡単に地図作製が出来る可能性も感じた。
  • 今後の進路などの参考としてとても面白かった また初めてドローンについて詳しくしれて良かった