地形学は、地表の形態(地形)がどのように形成されてきたのか、また将来どうなるのかについて科学的方法で研究する学問です。地形学のフィールドは高山から、河川、海岸、海底まで、極域から赤道域まで多岐にわたります。筑波大学地形学分野では、野外観測と室内実験によって地形の変化の過程(プロセス)を明らかにします。

新刊「自然地理学概論 第2版」

2008年に朝倉書店から出版された「自然地理学概論」が大幅に改定されました。

 地理学基礎シリーズ 自然地理学概論  第2版|朝倉書店

全15章で,スタッフの池田は第2版から著者に加わり,
7章「第四紀と氷河時代」(初版筆者の金沢大,青木先生との共著),
8章「プレートテクトニクスと大地形」,
12.1節「風化と気候」と12.2節「寒冷圏の地形」
を担当しました。

7章については,初版の該当箇所と読み比べると,約20年間に研究が大きく進展したことがわかります。8章で扱うプレートテクトニクスについては初学者向けの書籍が多数出ていますが,大地形を主題に構成された文章は少し珍しいかもしれません。

2026年度 地形学野外実験B

今年の野外実験は,例年になく参加者多数でした。

9/25@大学(直前実習),9/27~30@伊那谷と木曽山脈(+諏訪湖)

参加者それぞれがテーマを選んで,事前にいろいろ調べて資料を作り,その内容を直前実習や現地にて説明するスタイルの授業です(教員の役割は,事前にテーマと訪問地を提示して,参加者の資料作りや説明を適宜,補足したり修正したり)。

記録的な長雨が重なり,木曽駒ケ岳に行く林道が1日通行止めで,山は日帰りに変更。予定外に,かろうじて公共交通機関で移動可能な諏訪湖にも行きました。


断層運動によって,数段の河成段丘がそれぞれどのくらいずれたか,見ています。


最終日,すばらしい快晴のもと,急ぎ足で見られるものを見て回りました。
雨だったり,滞在時間が限られていたりで,せっかく熱心に調べてくれたものの現物を必ずしもじっくり観察してもらえず,あいにくでした。ただ,自然が相手なので仕方がありません。

新着論文:流域の地形条件に制約されるスイスアルプスの晩氷期以降の岩石氷河発達

山岳科学学位プログラム修了生の木附貴哉さんが,修士論文をもとに投稿した論文がGeomorphology誌に掲載されました。

Kizuki, T., Matsuoka, N., Ikeda, A., Matsushi, Y. and Matsuzaki, H. (2026) Topo-climatic controls on rock glacier chronology since Lateglacial period in the northwestern part of Mattertal, Swiss Alps, reconstructed by TCN dating. Geomorphology, 513, 110502.

https://doi.org/10.1016/j.geomorph.2026.110502

例えば,写真中央の奥行き1.5 kmの氷食谷の底をすべて埋める巨礫堆積物が,1.7万年前以降,どのような気候変化のもと,どのような地形変化が生じて形成されたのかなどを論じています。(UAV空撮,木附)

新着論文 & JpGU-Agu 2026年大会学生優秀発表賞受賞

藤原夏菜香さん(現・山岳科学学位プログラムM2)の卒業論文をベースとした論文が、日本地すべり学会誌に掲載されました。

藤原夏菜香・八反地 剛・森本 拓・小倉拓郎(2026)1792年眉山岩屑なだれにおける滑落崖の地形発達と土砂生産量,日本地すべり学会誌,Vol. 63,No. 4,pp. 5–12.

藤原さんはJpGU-Agu 2026年大会にて学生優秀発表賞も受賞しています.詳細は山岳科学学位プログラムのウェブサイトにて公表しています.

https://mountain-studies.tsukuba.ac.jp/2026/08/25/藤原-夏菜香さんの論文が「日本地すべり学会誌」/

JpGU-AGU Joint Meeting 2026

5月24~29日に、日本地球惑星科学連合(JpGU)とアメリカ地球物理学連合(AGU)共催の学会が幕張メッセ・オンラインのハイブリッドで開催されました。

  • Fujiwara, K., Hattanji, T., Ogura, T., Morimoto, T.: Landscape evolution of the main scarps in volcanic debris avalanches: a comparison of two cases of Mt. Mayuyama and Bandai
  • Okada, K., Hattanji, T., Kajita, T., Ogura, T., Doshida, S.: Impact of debris flow on channel geometry in headwater streams: A preliminary analysis in Hohu area, Yamaguchi Prefecture, Japan. 
  • Takai, T., Hattanji, T. The controlling factors of the change in channel width from upstream to downstream of waterfalls
  • Yoshihara, N., Araoka, D. Boosted chemical weathering in response to the formation of landslide deposits: insights from radiogenic strontium isotopes in a headwater catchment
以上,果敢に英語で口頭発表した院生さん達です。地形学セッションには,海外からの参加者も多く大盛況でした。少数ながら日本語セッションもあり,例年通り,そちらはそちらで学生が経験を積む機会になっていました。
  • 漣 拓輝・池田 敦:富士山におけるスラッシュ雪崩発生場の地形条件
  • 福谷有恒・池田 敦:剱・立山と木曽駒ヶ岳における氷河地形の分布と相対年代の予察的再検討 
そのほかスタッフも指導学生の成果も含めた発表をしてきています。
  • Hattanji, T., Tatsu, Y. Distribution of the past devastated slopes and shallow landslides: A preliminary analysis in western Japan
  • Ikeda, A., Kamakura, K.: Topoclimatic controls on bare-ground occurrence on avalanche slopes in heavy snowfall region, Japan 

2025年度 地形学野外実験A

2年生対象の野外実験,地球学類生の半数近くが参加しました。
今年の行き先は伊豆半島東部,主なテーマは海岸地形です。

砂浜に見られる地形について勉強中。

天井が崩落した海蝕洞です。
よく観察して,どういう地質構造に沿って侵食が進んだのか考えます。

最終日,スコリア丘の大室山に上がります。
海岸の崖をつくる溶岩流がどのように流れたか、地形図と上からの景色を照らし合わせて確認しています。
天気に恵まれ,海岸地形を堪能できたことかと思います。
3年生になったら次は山かもしれません(未定です)。

2025年度のゼミ生学会発表

主に地形分野在籍,修了・卒業直後の学生による研究成果の発表です。 

・日本地形学連合2025年学術大会(11月)
梶田大陽・八反地 剛・小倉拓郎・田中 靖・土志田正二:土石流による擾乱を受けた源流域渓流における階段状河床の形成
三好七佳・八反地 剛・佐藤昌人:地すべり地の水系発達と活動度の関係:LiDAR DEMを用いた分析
大津眞奈・木下七海・八反地 剛・小倉 拓郎:1970 年代に表層崩壊の発生した集水域における水路頭の地形解析―滋賀県愛知川流域の事例― 
達 陽生・八反地 剛:1940年代にハゲ山化していた山地流域における表層崩壊の発生密度
宮崎耕二郎・八反地 剛・小倉拓郎・梶田太陽・土志田正二:表層崩壊の深さが植生回復に及ぼす影響―2009年山口県防府市の表層崩壊の事例―

・2025年日本地理学会秋季学術大会(9月)
岡田一弥・山田周二:接峰面作成における山頂抽出法の提案とその有効性の検討

・雪氷研究大会(2025・津)(9月)
鎌倉京平・池田 敦:新潟県境周辺の多雪山地における裸地分布の規定要因

・日本地球惑星科学連合2025年大会(5月)
真庭志歩・池田 敦・佐々木夏来:東日本の多雪山地における亜高山帯針葉樹林分布を制約する地形条件
藤原夏菜香・八反地 剛・森本 拓・小倉拓郎:眉山岩屑なだれ滑落崖における崩壊地の変遷と土砂流出量
木下七海・八反地 剛・小倉拓郎・水野敏明・小島永裕:LiDARデータを用いた崩壊地における数十年間の植生回復の分析–滋賀県愛知川流域の花崗岩斜面における事例–
Parkner, T., Horikawa, Y., Hattanji, T.: Geomorphic Connectivity Patterns within in a Landslide Scar in Hokkaido Across Seasonal and Annual Timescales Based on UAV-SfM photogrammetry
濵野百音・ Parkner, T.: 崩壊地内部における地形プロセスのコネクティビティ―南アルプス大芦沢崩壊地の事例―